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アンガーマネジメント入門講座

ダウンロードはLinkIcon180517玉城先生レポート.pdf

講師紹介

玉城 久江 先生
医療法人財団青溪会駒木野病院 看護課長

演題

「アンガーマネジメント入門講座」

日時

平成30年5月7日(18:30~20:00)

会場

日本生命八王子ビル8階研修室

主催

公益財団法人 日本健康アカデミー


アンガーマネジメントとは

 アンガーマネジメントとは、怒らないことではなく、「怒りの表現」のさじ加減を間違うことによる「後悔をしないこと」であり、怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らないようにすることである。
 アンガーマネジメントが身につくと、怒りを上手に表現することができ、他人を傷付けず、自分を傷つけず、物に八つ当たりすることもなく、上手に怒りを表現することができる。

怒りとは

 「怒り」とは、決して悪い感情ではなく、人間にとって自然な感情の一つであり、怒りを面に出すことは身を守るための反応、すなわち防衛反応だ。
 また、怒りは「不安」、「つらい」、「疲れた」などの、ネガティブな感情の二次感情である。ネガティブな感情が解消されないとコップに水が溜まるように怒りの感情が募ってゆき、コップから水が零れるように怒りが限界値に達してしまうと、感情が抑えられなくなり必要以上に怒ってしまい、後で後悔してしまう。
 そうならないためには、コップから水を捨てるための気分転換を自分なりに見つけたり、コップを大きくしたりすることが大事だ。

問題となる4つの怒り

 怒りの表現には問題となる4つの怒りがある。

  • 強度が高いタイプ
    小さい事でも激高する、強く怒り過ぎる

  • 持続性があるタイプ
    根に持つ、思い出し怒りをする

  • 頻度が高いタイプ
    しょっちゅうイライラする、カチンとくることが多い

  • 攻撃性があるタイプ
    他人を傷つける、自分を傷つける、物を壊す

 この4つの怒りは後々後悔することが多い、他人とトラブルになりやすいタイプなので注意が必要である。
 怒りの感情を知っているのと、理解するのではかなりの差がある。自分では怒りをどうやって表現しているか、自分は4つの中のどのタイプなのかを理解するのが、アンガーマネジメントの第一歩だろう。そのためには、怒りを感じた際に穏やかな状態を0、人生最大の怒りを10としてその時の怒りがどのくらいなのかを数値化するとよい。数値化することによってわかりやすく、そして続けることによって自分をより理解できる。

アンガーマネジメントの3つの暗号

 アンガーマネジメントには、衝動のコントロール、思考のコントロール、行動のコントロールの3つの暗号がある。

  • 衝動のコントロール(6秒)
    怒りの衝動は長くて6秒と言われており(諸説あり)、6秒待つと怒りのピークは過ぎ去ってしまう。6秒間待って冷静になるためには、深呼吸をする、今頭にきていること、イライラしていることを指で手のひらに書くなどすれば、あっという間に6秒過ぎる。
    売り言葉に買い言葉のように衝動的に言い返すなどすると、後で後悔してしまう。

  • 思考のコントロール(三重丸)
    私たちは何故怒りを感じるのか、怒りを感じさせるものは何か。「誰か」、「できごと」、「なにか」と、いろいろ事柄を考えるが、根本は「べき」である。
    「べき」とは、自分の願望、希望、欲求を象徴する言葉で、一見するととても正しいように思える。だが、「べき」とは理想であり、自分にとっての価値観である。自分にとっては正しいのだが、人によっては程度に差がある。時代や立場によってもその程度に差が生じてしまう。その理想と現実の差が怒りを感じる理由なのだ。

    価値観の差は、多くの人は上の図のように線引きされている。
    ただし、二重目の丸はその時の機嫌や相手、立場によってぼんやりしていたり、大きかったり、小さかったりする。価値観の線引きは機嫌や相手、立場によってぶれないようにきちんと固定する方がよい。固定していないと、「昨日はよかったが今日は機嫌が悪いからダメ。」、「この人はいいが、この人はダメ。」ということが起こる。そのようなことが続くと、人からあまり信用されなくなってしまう。
    また、二重目の丸は大きい方がよい。これは、コップを大きくすることと同義である。
    しかし、丸は大きすぎても良くない。自分が絶対に譲れないことはしっかりと線引きし、相手がその線を超えてきたら誰であっても進言する。
    つまり、人や状況によって流されないように許容範囲をきっちり線引きすることが大事である。

  • 行動のコントロール(分かれ道)
    怒りを感じたときに、どのように行動すればいいか、どのように行動すれば後悔しなくて済むか、どのように行動すれば怒りが募らないで済むか、今後怒りを感じなく済むかを考える。
    まず、怒りの原因は自分で変える事が出来るか、それとも出来ないかを分類わけし、そのあと重要か、重要ではないかを分類わけするとよい。
    その後下の図に書いてあるよう行動をする。

    ここでポイントなのが、変えられない事柄について「こうなったらいい、なりますように」などという様に、願ったり、祈ったりしてはいけない。それをしても、ただただ変わらない現状に怒りが募るだけである。

怒りの性質


怒りの性質は大きく分けて5 つある。

  • 高いところから低いところは流れる
    怒りというのは、年齢が高い人から低い人、立場の高い人から低い人に行くことが多い。

  • 身近な対象ほど強くなる
    家族や親しい友人ならばわかってくれるであろうと思ってしまう。

  • 矛先を固定できない
    八つ当たりをしてしまうことがある。

  • エネルギーになる
    怒りというのは大きなエネルギーを有し、そのエネルギーは次につながる行動力にもなりうる。

  • 伝染しやすい
    怒りの感情は周りに伝染しやすい。周りに怒っている人がいるだけで自分にもネガティブな感情が生まれたことのある人は少なくないだろう。

怒りの連鎖を断ち切る

 怒りの感情を感じたときに関係のない人に八つ当たりをしてしまうと、八つ当たりされた人もまた違う人に八つ当たりをしてしまう。そうなってしまうといじめやパワハラなどにつながってしまうことがある。
 そうならないためには、すべての人が自分の感情に責任を持って行動をすることが、今後生活するうえで、何よりも重要である。

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