jp-kenko.org

心の健康(シニアの健康について)

ダウンロードはLinkIconこちらから

講師紹介

志水 祥介氏
医療法人財団 青溪会
駒木野病院内科医長

日時

平成27年5月28日(18:30~20:00)

会場

日本生命八王子ビル 研修室


高齢者の健康


高齢者の健康についてのお話しです。
病気の話ではなく、健康について考えてみようという講演です。

(問い)
健康とはいったいなんでしょうかを考える
・認知症の人は、もはや健康ではない? 
→一般的には健康でない

・医学的検査で異常がない人は、健康である? 
→一般的には健康である

・糖尿病の人が、毎日献身的な母親の介護を目的に、会社を退職した 
→一般的には健康でない
・なにも病気のない人が、また酒に酔って他人を殴り、会社を退職した 
→一般的には健康である

疾病生成論

病気というものには必ず、病理学的な病因というものが存在し、それが原因で人間は病気になる。
・病院を探り、・・・・というような理論
(例)
・胃潰瘍は、粘膜の損傷が原因であり、粘膜の損傷が治れば健康に戻る。
・ガンは、がん細胞の発生が原因であり、がん細胞がなくなれば健康に戻るが、なくならなければ健康にはならない
・認知症は、神経細胞の病的な変性であり、病的変性の原因がまだ明らかではなく、治らないので健康に離れない。

昨日まで、いたって健康であった人が、認知症という診断を受けた日から突然病気だということになってしまう?

   健康の定義
←病気   健康→
危険因子 健康因子

中年以降の心身の健康度
                健康度 良くない   健康度 良い
ナチス強制収容所から
   生還した女性        70%         30%
そういった経験のない
     女性            50%         50%

健康生成論

30%の人はなぜ過酷なストレスを受けたにもかかわらず劣悪な環境の中でも健康的に過ごせたのか?
アントノフスキー博士:Aaron Antonnovsky(1923~1995)イスラエル人
健康生成論の定義
なぜ健康は創生されるのか
なぜ健康は回復するのか
なぜ健康は維持されるのか

甚大なストレス、トラウマに暴露されたにもかかわらず、心身の健康を創生・維持してきた人たちに共通する要因(健康要因)とはなにか?を研究した
子供の教育に照らしてみると
・子供の弱点をたくさん見つけて、一つ一つの弱点を治していく【矯正していく】方法。
試験結果や通信簿によって、苦手な個所をさがして、反省体験を通じて行う学習法
・子供の良いところをたくさん見つけて、ひとつひとつをのばしていく(拡張していく)方法
しけんけっかや通信簿のみにとらわれず

ストレスは病気の原因
・会社環境のストレス
・家庭環境のストレス
・金銭関係のストレス
・友人関係のストレス
・地域環境のストレス
など
お酒を飲む、たばこの吸う、ギャンブルに走る、過食などで発散しようとする
これが悪循環として繰り返される

アントノフスキー博士は考えた
・ストレスは危険因子のみではなく、人間の成長の引き金にもなる。
・ストレスと向き合うことが成長の糧、人生の糧になる可能性がある。
・そのような「ストレス対処能力」を持った人たちが有する。

この「ストレス対処能力」を調べていくと、ある共通の感覚能力を高く有していることが分かった
「自分の生きている世界は首尾一貫している」
「生きることには筋道(秩序)が通っている」
「生きることには意味がる」
という確信の感覚(Sense of coherence)首尾一貫感覚

SOC(Sense of coherence)の3つの柱

・把握可能感
 自分の置かれている状況、自分のである状況には何らかの秩序があり、理解できうるものだろう
・処理可能感
 自分に起きうる事態に対しては、周囲の人たちや物資の協力を得れば、うまく乗り越えられるだろう
・有意味感
 人生というのは生きる意味があり、生活に生じる問題・ストレスは自分がエネルギーを投入するに値し、重荷というよりもしろ、自分がかかわる価値があるだろう。

病気の危険因子を排除しても健康にはならない、それよりも健康のための健康因子を増やす工夫をすべきである

健康因子
・レジリエンス(弾力性)

シニアの身体(肉体)

・高齢者が肉体的(物理的)に衰えるのは当然である。
・高齢者が病気になりやすくなるのは当然である。
・高齢者が何らかの障碍(しょうがい)を持ちやすくなるのは当然である。
外的な肉体は衰える

動植物は病気にならないが、人間は病気なる
高齢者が健康(生活の質)を保持するためのリソースは何か
・子供・孫の成長する姿、家族の様子、自分の思い出、元同僚、地域の仲間、信仰心
などによって「心的/内的環境(静穏)」を整えることによって健康の質を保持する
内的な健康を保持する
シニアの健康の本質
「心的/内的環境」が整う(静穏する)こと
=内的な健康によって「シニアの健康」は構築されていく。
もし肉体的な健康のみを「健康」とするならば、「若者は健康、高齢者は健康ではない」となってしまう

・自分の置かれている状況、自分のこれから出会う状況には何らかの秩序があり、理解できうるものだろう。
・自分にこれから起きうる事態に対しては、周囲の人たちや物質の協力を得れば、上手く乗り越えられるだろう。
・人生というのは生きる意味があり、生活に生じる問題・ストレスは自分がエネルギーを投入するに値し、重荷というよりむしろ、自分がかかわる価値があるだろう。

内的に健康な高齢者というのは、すでに人生の中でこのようなSOCをそもそも育んでいた
SOCが十分でない高齢者に対して、個人と社会が支えることで育む
「シニアの健康」

理解できうるものだろう→私たちが、高齢者にきちんと理解できるような説明と行為をする。
周囲の人たちや物質の協力を得れば→高齢者に起きる事態に対して、自分から周囲の人たちに物資や協力を行う
自分がかかわる→高齢者に対して

どんな病気であっても、内的な健康はいつまでも保つことができる。肉体的(外面的)な健康のみをもって、健康かどうかを決めることはできない


LinkIcon LinkIcon LinkIcon