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頭痛について知っておきたい基礎知識

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講師紹介

百瀬 義雄氏
医療法人社団KNI
北原国際病院院長

日時

平成27年2月25日(18:30~20:00)

会場

日本生命八王子ビル 研修室


神経内科とは


日本では約50年前に精神神経学会から独立した。「脳神経由来の疾患で、手術が治療のメインである疾患を除いたものが対象」といえる。一般病院で扱う疾患は脳血管障害、パーキンソン病及びパーキンソン症候群、頭痛、てんかんなどが多い。神経疾患の症状としては頭痛、物忘れ、意識障害、しびれ、麻痺、めまい、不随意運動、痙攣などがある。

頭痛とは

一口に「頭痛」と言っても様々な疾患が含まれている。脳そのものは痛みを感じない。脳を包む膜や血管、頭蓋骨や付着する筋肉・腱が痛みを感じる。耳鼻科疾患や眼科疾患、内科的疾患でも生じることがある。慢性頭痛は人口の10~30%にみられるありふれた疾患の一つ。特に脳神経外科/神経内科の外来では最も多い症状。一次性頭痛と二次性頭痛に分かれる。
 一時性頭痛…片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛、その他の一時性頭痛
 二次性頭痛…頭頸部外傷・傷害による頭痛(例:外傷後頭蓋内出血による頭痛)、頭頸部血管障害による頭痛(例:くも膜下出血)、非血管性頭蓋内疾患による頭痛(例:脳腫瘍)、物質またはその離脱による頭痛(例:薬物乱用頭痛)、感染症による頭痛(例:髄膜炎)、ホメオスターシスの障害による頭痛(例:高血圧)、頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頚部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面縮

一次性頭痛

片頭痛は日本人の約8.4%が羅患。好発年齢は10~30歳代。女性が男性の約4倍の羅漢率。「片」頭痛という名前がつくが、4割の方は両側性。発作は通常4~72時間続き、片側の脈動性頭痛が特徴。親や兄弟にやはり頭痛持ちの方がいることが多い。階段の昇降など日常的な動作によって頭痛が増強する。吐き気や嘔吐を伴うことが多く、ふだんは気にならないような光、音、臭いを不快と感じる。前兆のある片頭痛とない片頭痛がある。
 まず予兆がおきて前兆期、頭痛期のあとに回復期、寛解期となるが治るまでに半日~2日かかると言われている。片頭痛発症のメカニズムはまだ分からないことも多い。脳の表面の血管の周りに三叉神経があり、血管が炎症を起こした時に痛みが生じ片頭痛になるとされている。

閃輝暗点、アロディニア(異痛症)

片頭痛の初期に閃輝暗点という視覚症状が起こることがある。閃輝暗点だけ経験し頭痛はない場合もある。視野に一点見えにくい部分が生じ、弧を描く明滅する光が徐々に視野の辺縁に向かって広がる。弧の内側は暗くなっていることもある。通常は30分程度で消失する。閃輝暗点が起きている時、拡延性抑制が起こっていることがある。拡延性抑制とは大脳の後頭葉内側面(目からの情報を処理する部分)で一点、脳細胞機能が抑制される部位が生じ、それが同心円状に広がっていく。原因はまだはっきりとは判っていないが、脳梗塞や脳出血が生じているわけでなない。
片頭痛の時に頭痛をこじらせるとアロディニアという現象がおきる。中枢神経が過敏な状態になり普段だと痛みと感じないような刺激が痛みやしびれとして感じてしまう。具体的には顔に風が当たると痛い、髪の毛がピリピリする、髪の毛を結んでいるのが辛い、ブラシやくしが痛くて使えない、眼鏡やイヤリングが不快、痛い側が枕に当たると寝ていられないなどがある。

片頭痛の治療

市販の頭痛薬(バファリン、イブ、セデス、タイレノールなど)でも片頭痛が軽い場合は治る。それ以外に非ステロイド系消炎鎮痛剤(ロキソニン、ボルタレンなど)で治す方もいる。古いものとしてはエルゴタミン製剤(カフェルゴット、クリアミン)がある。トリプタン製剤は2000年代から使われるようになってきた。7割ぐらいはトリプタン製剤で良くなる。そのほかに吐き気止めとしてナウゼリンやプリンペランを一緒に飲んだりする。
日本では5種類のトリプタン製剤(イミグラン、ゾーミック、マクサルト、レルパックス、アマージ)が使われるようになってきている。点鼻薬や自己注射薬などがある。痛くなったらすぐに使うのがコツである。ただし薬物乱用性頭痛にならないように注意が必要である。トリプタン製剤の服用のタイミングは、予兆期や前兆期ではなく頭痛期の痛くなりだした時が一番いい。じっとしていても痛い、頭を振ったり頷いたりしたときにズキンズキンと痛い時が飲みごろと言われている。片頭痛の予防薬などもある。
片頭痛の要因はストレス、精神的緊張(特に緊張がとけたとき)、疲れ、睡眠不足、睡眠過多、月経周期、天候の変化、温度差、気圧、人ごみ、アルコール、他の食品群、体質などがある。
片頭痛を遠ざける生活をすることが必要である。ストレスを溜め込みすぎない、過度な運動、規則正しい生活、週末も平日と同じ時間に就寝し起床する、朝ごはんはしっかり食べる、カフェインの摂りすぎに注意、アルコールの摂り過ぎにも注意する。

緊張型頭痛

緊張型頭痛とはもっとも頻度の多い頭痛である。有病率は22.3%。いわゆる「肩こり頭痛」。疲労や不自然な姿勢で誘発される。肩こりにより頭蓋骨に付着する筋肉が緊張し硬くなり頭蓋骨を締め付ける痛み。頭全体を締め付けられるような、あるいはお椀を被ったような頭痛。両側性で時にふらふら・めまい感を伴う。
緊張型頭痛の原因として、精神的ストレスが大きい。また肉体的ストレスもある。頭部はスイカに匹敵する重さがあり、それを首で支えているのでうつむき姿勢や高い枕、頸椎症などがあると頭痛が悪化する。
治療はストレッチ運動や頭痛体操、休憩、入浴や適度なアルコール、姿勢をよくする、枕を低くする、マッサージ、蒸しタオルで首や肩を温める、視力に合ったメガネを使う、顎関節症を治す。生活習慣の改善である程度良くなる人もいるが、かなり重症な人には薬を使う。筋肉の緊張を解く筋弛緩薬や抗不安薬、漢方薬、消炎鎮痛剤、湿布等。

二次性頭痛

二次性頭痛の原因は数多く、生命の危険も存在するところから、特に注意深い診療が必要である。治療上の観点から二次性頭痛は外科的治療の必要なものと不要なものとに分けられる。二次性頭痛を疑うポイントは「いつもと様子の違う頭痛」「いままで経験したことのない頭痛」「最近どんどん悪くなってくる頭痛」「最初にして最悪の頭痛」「突然の頭痛」などがある。発熱や発疹、項部硬直を伴う頭痛、麻痺や視力・視野異常、意識の変容や痙攣など神経症候を伴う頭痛、全身性疾患の既往、40歳以降の初発頭痛は二次性頭痛の可能性が高い。二次性頭痛の疑いがあれば、画像検査など適切な検査を行う。

  •  くも膜下出血…「今まで経験したことがない」、「バットで殴られたような痛み」と表現されることもあるが、軽い痛みのこともある。嘔吐を伴うことがある。再出血で重篤な状態になることもある。医者にとっては絶対に見逃すわけにはいかない病気である。くも膜下腔の動脈から出血する。大きく分けて脳動脈瘤、外傷、動静脈奇形からの出血があるが、特に脳動脈瘤からの出血が多い。喫煙、高血圧、過度の飲酒が原因になる。年間10万人中、約20人発症し、男女比は1:2でやや女性に多く、50-60歳の方に多い。家族で脳動脈瘤を指摘されたり、くも膜下出血をきたしたことがある方は注意が必要である。
  •  脳動脈解離…動脈の壁が裂けて、血液が入り込んだ状態。外傷やスポーツ、カイロプラティックなどにより生じる。片側性、拍動性の顔面痛、頸部痛、頭痛が生じる。脳梗塞、くも膜下出血の症状が現れる。
  •  静脈洞血栓症…早期にほぼ全例で頭痛を認める。痙攣を伴うことが多い。先天性凝固因子異常、感染症、脱水、外傷、経口避妊薬内服などが原因となる。坑凝固療法を行う。
  • 脳腫瘍…原発性と転移性がある。それぞれ年10万人に10人ずつほどの発症。転移性のものは男性では肺がん、女性では乳がんからの転移が多い。頭蓋内圧亢進、または脳膜の牽引、水頭症によって頭痛が生じる。ゆっくりと徐々に悪化してくる。緊張型頭痛に似ている。早朝頭痛が多い。
  •  慢性硬膜下血腫…10万人あたり年に1・2人。男性に多い(約90%)。大酒家が無防備に転倒・頭部打撲してなりやすい。頭部外傷の直後には問題がなくても、徐々に内出血が進み数週間から数ヶ月経過してから生じることがある。頭痛のほか、認知症様の症状、不全片麻痺、尿失禁などの症状が生じる。頭部CT・MRIにより診断は比較的しやすい。手術によって血腫吸引を行うことにより速やかに症状が改善する。
  •  髄膜炎…髄膜や血管に分布する三叉神経が、刺激されることにより生じる。発熱や項部硬直、羞明、悪心、倦怠感を伴う。脳実質に炎症が波及すれば、局所微候や意識障害を生じる。髄液検査によって診断が確定する。ウイルス性、細菌性、結核性、真菌性、がん性などに分類され、それぞれに適した抗生物質などの投与を行う。

最後に

頭痛と一言に言っても、色々な疾患がある。慢性的な頭痛になると、なかなか病院にかからずに対処している人も多い。しかし、一度は病院でしっかりと診察を受けたほうがいい。


参加者の声
頭痛には様々な要因があり、対処する方法も知ることができました。緊張型頭痛は、日々感じることもあり、時間を見つけてストレッチをするなどしていきたいと思います。
単純に頭痛といって放っておくのは危険なことが多いとわかりました。

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